不動産売却承諾書は、不動産業者が物件の広告をして、希望者が購入申し込みを書面でした場合に、売主として売却する意思を購入希望者に伝達するものです。これが仮契約や民法上の予約とは相違点があることは、購入申込書・媒介契約書のペイジでお話ししました。ここでおさらいですが、「買いませんか?」という広告に対して、「買いたいです。」という意思を書面で提出してもなお、契約は成立していないと解されます。
契約を有効にするためには、書面による契約が必要です。不動産の売買取引は、登記を移転させて初めて第三者に対する対抗要件を備えます。登記移転に契約書面は必須ですからやはり契約書が必要になります。ここで、なんだか聞きなれない言葉が続きました。詳しい説明は割愛しますが、簡単に言うと、契約書面が無くても不動産売買の契約は成立します。所有権や占有権を移転させることはできます。ただし、登記が移転されなければ買主は第三者(他に当該物件の所有権等を主張する人)に対して排除したい旨の法的保護を受けることが大変困難になってしまうということです。
売主にとっては、何やらややこしいだけで、このような部分は買主の責任だし、仲介業者がうまくとりしきればいいのではないか?と考えるのは危険が伴います。とりわけ今回の民法改正で、売主は買主の目的を達成させる義務のようなものを明確に課されることになりそうなのです。つまり、登記が移転されないのは売主の背信的行為であり、どのようなレベルの罰則が適応されるのか興味深いところとなるのです。勿論、仲介業者もその責務を免れるものではありません。
中国の方々は、商取引においても人間関係を大変大切にするそうです。日本においてもほんの少し前まで「信用」こそが商売の基本でした。いつのころからか猜疑心が強くなったものです。ウェブ取引と配送技術の進展で商品やとりわけ材料・素材の商品価値が世にさらされることになりました。誰もが簡単に”見積”をすることができます。おかげで”目には見えないプロのサービス”というものはなくなってしまいました。加えて20年近く経済不況が続いていたのですから大変です。業者としては、”見積にないことは舌でも出さない”というところです。残念ながら、このような状態になることを予測した人は少なかったようです。
ネット社会を止めることは不可能です。ただこのまま消費者保護行政に万進し、欧米型の商取引ルールを導入し続ければ、パラドックスのようですが消費者に対して満足のいく財・サービスの提供はますます困難になるだろうと、管理人は確信を覚えるところです。