貸すときに、案外と厄介なものが建物・設備の状況の取り決めです。一般的な契約書における費用の責任所掌範囲は、「必要費が、貸主(所有者等)」、「必要費を除く有益費が、借主(占有者)」と考えていただけそうです。勿論、契約書の特約・容認事項は常識の範囲内であれば有効です。借主の故意又は過失に因るときは、当然に借主が負担します。また原則的には修繕等の行為は、貸主がします。ただし、貸主の承諾があるときは借主がしても構いません。
法律行為に絡むときの概念として、「建物」は、”建築物そのもので基礎を含む”と考えられます。「土地」は、宅地化済の更地又は底地が原則で、そうでない場合は「原野、雑種地、山林、農地など」の現況種別を明示することが誤解を招かない方法です。ちなみに宅建業法では「土地」でなく「宅地」という概念です。これは”建物所有目的の土地”を意味します。
賃貸物件は、建物と建物に附加された設備等(建物と一体不可分なもの)の所有権が借主(占有者)に移転することはありません。ただし、一般原則として置き去りにされた動産(もの、容易に移動できる)の所有権は、占有者(借主)に移転します。そこで、法律行為と一般常識の誤謬を正すために契約書等に設備欄を設け、どのような取り決めであるのかを図るように予定されています。
管理人は具体的には、ハトのマークの全宅連の契約書書式において、設備欄の「有」、「無」を利用します。「有」は、所有権が移転しません。従って、修繕等の一義的責任は貸主にあります。「無」は、①必要なら持ち込んでください、②残置されているものは利用できますが、廃棄するときは貸主の了解を取ってください、を意味するように概念付けをします。
もう一つ気になる用語が、「造作」です。建具、畳、水道設備、空調設備などを意味します。建物と一体不可分であるものの”更新”が予定される部分といったところです。所有者の所掌範囲ですが、一部の建具についてはその取替や修繕を借主負担にすることが一般的です。
ここで「エアコン」を考えてみましょう。管理人は、”集中管理や天井埋め込みタイプなど”のものは造作であり、「設備」としては原則「有」であることが望まれると思います。しかし、”ルームエアコン”は、昔と違って設置・撤去等も容易になりました。価格についても安価なものもあり、またルームエアコンの機能の寿命はその使用方法や手入れによるところが大きいことは周知の事実であり、もはや少なくとも「造作」とは言い難いと思います。消費者の多様化した需要にこたえるためにも、「ルームエアコン」は、他のTVなどの電化製品や卓上型のガスコンロのように先出①と②の「必要なら持ち込んでください。残置されているものは利用できますが、廃棄するときは貸主の了解を取ってください。」の部類に入れることを推奨します。
このような議論を正確に共有するために必要不可欠なものが、「物件告知書」、「設備告知書」です。貸主にとってデメリットらしきものは見当たりません。