空家対策を考える

6eba3538408e4f45093f7b5ec2ad13ca_s 空家等対策特別措置法が平成27年5月26日に施行されました。目的は、「(抜粋)適切な管理が行われていない空家等が地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしていることに鑑み、①地域住民の生命、身体又は財産の保護、②生活環境の保全、③空家等の活用のために、国による基本方針の策定、市町村(特別区含む。)による空家等対策計画の作成等を定めて、空家等に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって、公共の福祉の増進と地域の振興に寄与する。」とあります。

具体的な方法は、各市町村の条例によるところになります。長崎市においても「長崎市空き家等の適正管理に関する条例」が平成25年7月1日にすでに施行されています。幸い、同特措法に適う内容になっているようです。空き家の調査は、市民等の情報提供と市の独自実態調査によります。管理不全な状態の空き家は、助言又は指導、勧告、命令、代執行の順に市の対応が進められます。
条例での対応では難しかった固定資産税関連の情報の内部利用と所有者が不明の場合の代執行ができるように同特措法に規定されました。

空家等と特定空家等という概念が生まれています。売却用、賃貸用、セカンドハウスなどは特定空家等に含まれません。適度に管理されているものも同じです。この管理不全な状態の特定空家等に対して勧告が行われると固定資産税・都市計画税の居住用建物の底地に対する減免措置が受けられません。

このような内容に照らして、文頭の施行事由を見ると、①と②については対応されているようです。③については、データベースの作成がそれに当たるのかもしれません。
多くの専門家が指摘するところですが、実効性の問題は残されます。撤去費用の公的支援などこれまでも各種の対策が取られていました。決定打はなかなかないものです。最終的には代執行という選択を自治体がするかどうかにかかってきます。おおむね費用の償還は困難であると思われるので、公費つまり税金を投入することになると市民の理解を得にくくなるものと思われます。

6fa456b0b145c391b1a61e1656f6c250_sさて対策です。多分、歴史を振り返ったり、視点を変えたりすることが有効です。
まず歴史について、日本においては過去に木造住宅は、およそ40年のスクラップアンドビルドが採用されていました。確かに必要に応じて手立てを講じると木造住宅は100年間でも存続可能です。ただし、放置すると勝手に朽廃して土にかえるものだったのでしょう。
実は、住生活基本法が平成18年6月8日に施行されています。この「基本法」というものは、その制定後に様々な骨格を定めることを想定しています。当初は、木造でも200年住宅を標榜していました。この頃は、長期優良住宅と名を変えましたが、100年住宅とも呼ぶ場合があります。つまり政府は、いわゆる住居に経済効率性を求めているのかもしれません。管理人はこの政策に原則賛成ですが、今のままでは75年後にその100年住宅の周辺環境がどのようになっているものか心配です。

視点については、建物の利用方法が事業用と居住用の二者択一ではないことに注意を払うべきです。空家が生まれる原因は様々ですが、本音としは「その近辺が暮らしにくい」ことがあげられるでしょう。実は、都市計画の用途地域区分という制度があります。詳しくは説明しませんが、”高度成長”と”モータリゼーション”、つまり”人口増加”と”車社会の進展”を前提にしているようです。要点は、「住居系地域に商業施設・工場等は作らせたくない」というものです。前提条件が崩れたので、この都市計画自体を見直すべきです。政府は、現行法を変えることなく商業・工業系地域に住むこと(コンパクトシティ化)を推進しています。

横道にそれますが、地方の地価下落が住居地域において顕著である要因もここにあるかもしれません。また確かに現行法規下においても、住居系地域にも一定の商業施設を設けることは不可能ではありません。ただ、大資本を前提とする現在の小売大規模化(大量仕入れ、大量物流、大規模小売店舗)の波にあらがうことは、小資本であればあるほど困難性が増します。

住宅空き家の対策ではありませんが、商業・工業系地域においても、建築基準法の関係で、事業用として建築されたものを居住用に用途変更することが困難です。採光、通風、階段などの規定、又は適応になる用途ごとの制限などは、かなりの障害です。従って、事務所・店舗の空家対策には、建基法の改正又は運用変更が不可欠です。

結論的には、都市計画の見直し、規制緩和が重要です。加えて、極めて小規模・矮小化された宅地の利用大規模化のために、相続法・関連税法にまで踏み込む必要があるかもしれません。経済効率性(100年住宅)を実現するにも居住環境が整うことが前提です。千数百年に亘って培った「循環型農業」を、ほんの戦後数十年で失ってしまった誤りを繰り返すことは、社会悪であると思います。

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