売主にとって契約締結は、やっとひと山越えたところという印象でしょうか。契約そのものは、割とあっさりしたもので、これまでいろいろと不安要素ばかりを述べてきたことを管理人も反省するところです。実は、不動産取引において一般の売主がトラブルに巻き込まれることは少ないものなのです。
世間や不動産業者などから聞かされる(このブログも含めて)不都合な事実は、「売主宅建業者」の場合に発生していることが多いようです。「売主事業者(企業団体だが宅建業者でない)」が多少それに次ぐくらいです。
本来契約締結は、売主・買主双方が対面し、契約内容の確認をしてサインを交換する形式が一般的です。その場で訂正・変更もできますし、何より”当事者意識”が向上します。ある意味自己責任の心構えができるというところでしょう。日本の不動産取引の場合は、商習慣からか、別々に仲介業者より説明を受け、サインと印鑑を併用しながら進めることも多いものです。またこれは、不動産取引に限りません。思いのほか多くの契約場面で仲介業者(宅建業者以外の)やそのようなもの(取次店など)が存在しています。
管理人の勝手な感想ですが、日本国民の意識の中に、哲学的には”完璧なものはない”という意識があるのではないかと思っています。すべては移ろうのです。従って、売主が誠心誠意に対応していれば、買主は多少のことがあっても例えば「木造住宅なのだから・・・」とか、「引渡し時点では雨漏り跡は、確かに見当たらなかったな・・・」といった具合に納得(自己責任化)していたのではないでしょうか。ところが残念なことに、近年の判例集などを読んでみると、買主の心変わりに売主や宅建業者が振り回されている印象を持たざるを得ないものが散見されます。
最近、損害保険の分野で、もらい事故(相手が中央線をはみだして衝突したもの)でももらった側(通常は被害者)の責任を認め、自賠責保険を適応させようとした判決を記憶しています。いつの間に無過失でも責任を取らなくてはならなくなったのでしょうか。それとも自動車を運転すること自体が無過失要因をなくさせてしまうのでしょうか。実はこの件に関しては、もらった側の車両所有者が法人であったための特異な例かもしれません。いずれにしても管理人などは、昨今の消費者行政対応は、やはり少し行きすぎであると思っています。「泣いて馬謖を斬る」という言葉は、少なくともこの日本の司法には残っていると思っていました。
冒頭にさほど心配しなくていいですよと言っておきながら、結局また注意喚起のような格好になってしまいました。少し言い換えます。事前準備をしっかり整えてから契約にのぞめば、手付金を受け取るだけです。そしてこの手付金は、売主自身が解約したくなったとき、買主がローン解除を申し入れてきたときなどを除けば、手放すことはそうありません。でも使わないでください。稀にあるし、もし何らかの形で裁判になった時でも「泣くこと無いように馬謖を斬らない」という判決が出ないとも限らないからです。