不動産価格査定書

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不動産の価格査定は、大変難しい問題をはらんでいます。正常な経済取引の前提条件の一つに、「一物一価」があります。読んで字のごとくで、同じ条件であれば”同じもの”は、”同じ値段”であるはずだ、というものです。実は、”同じ条件”というのがみそですね。

工場出荷から店頭に並ぶまで”もの(製品)”自体に変化はありません。しかし、同じものですが売れる状態までの変遷があります。販売促進・広告など(マーケティング)により需要の喚起がされ、販売店へのルート開拓(販売チャネルの確保)、競合他社との競争優位確立又は競争回避(ストラテジ)、販売代金回収の管理(債権回収リスク)など様々なコストが加算されて店頭販売価格になります。ストックしやすい例えば缶入り飲料のような”もの”の場合は、全国レベルで販売管理が可能で、需要も一定量見込めれば、全国統一価格を実現することができそうです。その代り、生魚のような”もの”は運搬も困難でかつ需要に地域性があるので、全国統一価格はとても無理があるでしょう。

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不動産は、読んで字のごとく、その不動性(動かせないこと)から、限定的な価格になります。また複数の評価基準があることから、一物三(四)価などと言われます。売主は高く売りたい、買主は安く買いたいという部分は同じです。しかし市場は売手市場だったからこれまでは、売主の価格が優先されました。更に、日本はバブル経済を経験したためか、不動産価格の形成に政府の意向が少なからず影響しています。

  • 固定資産税路線価(市区町村が管理)
  • 相続税路線価(国税局が管理)
  • 公示・基準価格(国土交通省・都道府県が管理)
  • 不動産鑑定価格(不動産鑑定士が管理)

このような価格があります。ちなみに不動産鑑定士は、国土交通省所管の資格でその鑑定評価書は裁判の証拠にもなり得るほどの効力があるそうです。もっとも実勢価格は、流通価格、相場などと呼ばれてまた別なのですが、上記の価格の影響を受けないわけにはいきません。またこのところ、固定資産税路線価が相当に細部にわたって公表されているため影響が大きくなっているものです。これには、賛否両論あります。

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不動産価格査定書は、その目的を明確にしてからご依頼ください。もちろん、管理人の査定書は、宅建業者がするものです。”取引が成立しそうな価格”を心掛けています。管理人が買い取ることは考えていません。一番悩ましいのは、売主は「不動産の最有効活用」を念頭に評価するでしょう。買主は、自らの目的を念頭に予算化するでしょう。つまり、双方の評価方法が必ずしも連関しないことが予想されます。戸建やマンションは居住用ですから、目的は合致しそうです。ただその評価方法が違えば当然に価格差が生まれるでしょう。

このところ、地方は不動産価格の下落傾向に歯止めがかかりません。土地は需要の減少、家屋は空家を含めてストックの増加による供給過剰が原因かもしれません。それでも歴史的に人気のあるエリアは、依然として価格を維持しているのも事実です。一般的な市場では、一気に買手市場に変貌するのでしょうが、不動産はその不変性、非代替性により変化は幾分緩やかになるでしょう。

最後に、不動産価格査定書の別の側面をご紹介します。ずばり「宅建業者自身の査定書」といった性格です。価格査定書を見ればその宅建業者の意気込みや普段の営業姿勢を垣間見ることができます。不動産業者の中には、価格査定書も含めて”文書”を発行することをとにかく回避したがる傾向がまだ残されているようです。管理人は、メールなども”文書”だとすると、とても気軽に送付してしまいます。たしかに後々混乱が生じたときに、文書のようなものは発信した側に不利に働くことが多いようです。ただ少々、発想がネガティブすぎる気がしてなりません。

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